アコーディオン 修理・調律



TOKYOベイアコは、アコーディオンの修理・調律を本業にしてきました。

確かな腕を持つ職人になろうと、一年365日、一台 一か所を丁寧に対応させていただいております。

このページでは、

  • TOKYOベイアコに修理や調律のご依頼を検討中
  • アコーディオンの修理・調律について信頼できる情報を知りたい という方むけに当方の仕事の仕方を紹介させていただきます。                               Facebookで2013年に「アコーディオン修理塾」を始めました。 すでに700編をこえる修理の事例を紹介する記事が画像や、動画になってのっております。その総集編として上記動画を作成しました。ご参考になれば幸いです。

 

 

Ⅰ 外装をキレイにする

外装をキレイにする作業を丁寧に解説した動画です。

アコーディオンの美しい外装の秘密がお分かりいただけるかと思います。

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Ⅱ 鍵盤をキレイにする

当店の鍵盤クリーニングについての動画です。

修理調律で、一番最初に手をつけるのが鍵盤部分。普段見ることのできない鍵盤の分解からクリーニング方法まで詳細にご覧いただけます。

 

 1 鍵盤のオーバーホール 

修理調律で、一番最初に手をつけるのが鍵盤部分です。左の空気開閉バルブも同様に最初にチェックします。

なぜ最初に鍵盤なのか?というと、その理由は内部リードの「良し悪し」も、鍵盤が正常に作動してはじめて意味をもつためです。たとえば、スタックや、キーパッドからのエアもれ、異音(こすれ音、金属に当たるようなノイズ)をそのままにしておくと、トラブルは永久に続くことになります。

作業工程は以下のとおり。

  1. グリルカバーをはずす
  2. スイッチの基盤を分解して本体からはずす

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スイッチの左に 伸びた金属の太い線は、先が特殊な留めワッシャで固定されています。ピンセット ピンセットや、細いキリのようなもので、ワッシャを外すのですが、このワッシャは特殊なサイズなので、決して無くさないことが大切です。

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 2 キーボードを分解する 

次に行うのが、鍵盤のアクセル(芯棒)を抜く作業。鍵盤にむかって、右はしの本体との接合部をよく見ると、金属カバーが2つの小ネジで留っているので、それを取り外します。

それから、強力なペンチでのぞいた芯棒(通常2本。 黒鍵用 と白鍵用が独立していることが多い)を抜きます。*一部仕様ではコイルばねで鍵盤をじかにとめる仕様もありますが、これはバネをはずせばすぐ分解できます。

外した鍵盤はナンバーが記入されているかどうかチェック。もし記入されていない場合や、うすくて読みにく場合は番号を 書き直します。うっかり間違えると動かないキーになるので注意が必要です。

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作業は、上の画像のような少し広い鍵盤入れを使います。当店では段ボールで作成。むかし、 農家で使っていたトオミのような形が使い良いです。

 

 3 鍵盤のさびおとし・クリーニング 

次に行うのが芯棒のさび落とし。長い年月支えてきた芯棒はところどころサビがでています。

ひとつひとつの鍵盤について、以下のことを行います。

  1. 外観のチェック : 表面材の曲がり、うきの有無、芯棒の支点部分の金具(しんちゅう)のサビ、アームと鍵盤の固定状態、アーム先のエア開閉バルブの接地面(グリルプレートに設置する面)の跡のチェック
  2. ごみの除去 : 刷毛でほこりを落とす
  3. 表面材エッジ : ふつう厚み1mm強の表面材が鍵盤の芯材に貼られている。その厚み分をエッジといい、ここが汚れやすい。 弾くたびに、このエッジが見えるので、分解の折 クリーニングする。削らない程度に、やすりや木片でぬぐう。合わせて、鍵盤手前のかぶせも同様に行う。
  4. 芯棒の支点金具のさび落とし : この部分がスタックの大きな要因。5mmていどの合成ゴムシートにウェスをくるみ、クリーニング剤を少量つけ、磨く。*楽器によって、支点の形状が 受け型と、差し込み型とがある。
  5. アームのよごれとり
  6. エア開閉パッドのごみ除去 : この跡をよくみる。これで、グリル面との接地状態 ~ 位置のずれ、変形~などがよくわかる。
  7. 表面材のみがき : 当クリニックでは、アルカリ性の研磨剤でみがく。 長い年月のよごれが付着しているので根気強く、磨く。*黒鍵のばあい、立ち上がり面の向かって左側面をとくに磨く。ここが汚れやすい。

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鍵盤にはたくさんのほこり、ゴミがたまっています。それを刷毛ではきながら、掃除機ですいとっていくのですが、この細かいほこりは、ジャバラの開閉のたび、本体にすいこまれ、押したときは周囲に飛散し、それを肺に吸い込むので衛生上好ましくありません。

カビが生えている場合は、消毒用アルコールなどで拭いて根っこから取り去ります。グリル表面(アルミ合金)のクリーニングも必要。長い年月で、しみ、かびなどが付着しやすいので注意が必要です。

(実は、調律のときはマスク着用します。これは身を守る長年の知恵。以前、のどを痛めたことがあります。)

どれだけホコリが飛ぶかの実験として、朝陽を受けてジャバラの 開閉してみると、あたり一面飛び散るホコリが朝陽に当たり幻想的でもあるほどです。

 

 4 鍵盤を入れなおす 

芯棒をさしこみながら、高音域から白鍵、黒鍵の順に、交互に装着します。

  • スプリングの指定位置を間違えず、入れなおす。スプリングがずれると、鍵盤の戻りの力が変わってくる、異音が生じます。
  • エア開閉パッドの位置が正確に合致しているか確認しながら入れる。
  • 1つを入れ終わるたび、何度かキーをたたき異音の有無を確認する。あとで、発見すると、もういちどオーバーホールすることになる。

芯棒はかなりきつく設計されているので、自分の手では押しきれない場合、固定型ペンチなどを使って少しずつ入れていきます。無理に押し込んだり、金づちでたたくと、支点の木部が割れ、大きな損傷になるので注意が必要です。

最後に、キーの高さをレベラーで測りながら合わせます。

ずれがある場合、アーム用金具、ペンチ類で補正します。本格的にはアームと駒の接合部を外し、正確な位置~エアもれがしない位置、角度に調整しなおしていきます。溶接は ワックスであることが多いです。

 

 【鍵盤の修理事例】 ExcelsiorのMML 37鍵120ベース 

鍵盤の修理事例を解説いたします。今回は、ExcelsiorのMML 37鍵120ベースを取り上げます。

症状:

「鍵盤を押さないのに音が鳴る。バリバリというノイズが出る。キーの動きが緩慢。ベローまわりの修復」

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この楽器は由緒ある「うたごえ」酒場で活躍してきた、もう40年近く働いてきた楽器でした。

ヤマト宅急便での1000キロの長旅。わがクリニックの診察台のうえに横たわっているそれを見て、汚れ、へこみ、鍵盤のべっこう色の変色を見るとどんな過去をもっているか想像できます。左右のグリルボタンは、なんとガムテープ。Excelsiorのロゴは全てどこかへいってしまい、ジャバラのリブはすれてベローの色も変わってしまっていました。

それだけではなく、ジャバラを動かすとスカスカで、しかもキーを押さないのに複数の音が出てしまいます。鍵盤は、いくつかスタックして(押したまま戻りが鈍くなる状態になって)いました。

実はこういった「ひん死」の状態で、当クリニックに持ち込まれるのはそう珍しいことではありません。広い日本には、今やおそしと”重症楽器”が再生される日を待ち望んでいるのだと思います。

 

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Ⅲ 【リードを整える】さぶた革  ブロック

リードを手入れすることについての動画です。

修理調律で、一番最初に手をつけるのが鍵盤部分。普段見ることのできない鍵盤の分解からクリーニング方法まで詳細にご覧いただけます。

リードの語源は河原に生えているアシの一種だそうです。この茎を削ってオーボエなどの楽器の振動板にしたことから、植物の名=リード=簧(した)と呼ばれるようになったのです。

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風の力をムダなく音に変えるのがリード革で、風の流れの逆支弁の機能を果たします。

表のリードが鳴る時は、革がぴったりしまって、風力をリードに集中させます。裏のリードが鳴る場合も、裏に貼った革が働きます。リードの大きさ、したの強さに適応するリード革(さぶた革)があり、プラスチック革(バルブ)も機能は同様で本革から最近ではプラスチック弁を使用するケースが増えてきています。

リードには、リードにあったサイズと柔軟性のある(戻る力)を確かめながら準備します。革の裏(バックスキン)の毛あしの方向をみて、根もとを下(リードの鋲のあるほう)にして貼ります。

糊は以前はセラックを溶いて使うことが多かったようですが、今は イタリアでも工業的な接着剤(Colmante)を使います。 揮発しやすく、固くなって使いづらいので私は、G17 (コニシボンド)を使います。接着力が強すぎると、再修理のときに革が傷んで使えなくなります。そうすると貼りしろが損傷してしまうため、貼り直しの際にも不利になってしまいます。

低音域から、1オクターブ前後は革のもどりを確実に、柔軟にするためのブースターピンをつけます。

当然ながらリードの内側(弾く時の音でいえば、ジャバラを引いたときのリード)にも同様に革を貼っていきます。これはかなり慣れが必要で貼ったあと、チューニングベローなどで音を出して、異音のないことを 確認しながら、貼っていきます。

革の方向がそれるとプッという音や、とぎれ音が出てきます。プラスチック革はブースターピンのかわりに、1枚、2枚の重ねがあるため、作業は早くできます。

よくいただく質問で、「本革とプラスチックとどう違うのか?プラスチックは安物で本革は高級品か?」というものがあります。接地(弁がもどったとき)の際、プラスチック系は「カシャ」というような乾いた音がわずかに出てきますが、本革はこれが少ないです。

ただ、経年の安定性でいえば変化しにくいプラスチックが有利で、最近の機種はかなりプラスチック系が優勢になってきています。ベース部の最初のオクターブ、2つ目のオクターブには革のほうが具合がいいようです。

 

 アライメント 

リードはよく見るとプレートよりわずかに湾曲して、反り上がったような感じで取り付けられています。この湾曲のぐあいやリードプレートとのすきまリードの反応を調整することを「アライメント」といいます。

へこみすぎ、出っ張りすぎ、ななめ、ヘッドの状態と実際の音量、立ち上がりなどをチェックします。10-reedleatherS

プレートとリード(簧)のすきまは、20-30ミクロンという極めて微細なすきまに設定されています。この隙間にジャバラのエアが流れ込んでそれが起動力になって、はがねのリードを押し込み、またそのリードの反発力で戻って、またエアで押し込むという動きが瞬時に連続しておこってリードは鳴るのです。

長期間経過すると、このすきまが右、左にずれたり反りが少なくなったりします。最悪の場合はリードがプレートに当たって金属音を出したり、リードがプレートにあたって、そのまま動かなくなって、音が出なくなってしまいます。

 

 リードの修理ルポ 

アコーディオンの修理で一番気を使うのが、リードまわりだということは言うまでもありません。37鍵盤のMMLで、押し引き含め高音部には222枚、低音部4列式で96枚、合計318枚のリードが装てんされています。

これが41鍵盤HMML、MMMLなど4セットタイプだと、同様に328枚と120枚 計448枚になります。この300枚、400枚のリードのコンディションを見極め、音程と音質、インターバルと和音の響きをつむぎだす作業は、奥の深い手間のかかるものです。

センスのよしあしが問われる、難解な作業でもあります。

まず、使い込んだ楽器の内部をみてみましょう。

リードの革がそれたり、サビやゴミがいっぱいで、目に見えないほどの細かいホコリが無数にあります。

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リードの修理ルポ①「リードとブロックの症状」

クローズアップすると、そのすさまじいばかりの汚れが見えてきます。このほかにも、リード関連の症状は

  1. さぶた革の硬化、変形、カビ、ハガレ リードワックスのヒビ割れ
  2. ワックス熱損傷
  3. エアバルブ孔との位置ずれ
  4. リードブロックのゆがみ
  5. リードブロックの取付位置ずれ
  6. スライダーのサビ
  7. 動作不良

などがあります。

リードの修理ルポ②「革のはりかえ」

まず、刷毛と掃除機でゴミを取り除きます。

状態がひどいかびなどの場合は、戸外で陽にさらし、そのあと全ての革をピンセットで取り除き、リードプレートに付着したのり跡などの汚れをとっていきます。

サビの場合は可能な限り、細いサンドペーパーでサビを落とし、その上にさび止め剤を薄く塗ります。

裏のリードのサビはやっかいで、細いヤスリの表面を裏リード面にこすりつけ、落とすしかありません。本格的には、ワックスをはがし、オーバーホールして行うことになります。

リード、ワックス、ブロックのぐあいが全て確認されたのち、次に革を貼っていきます。

 

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Ⅳ アコーディオンを調律する

調律には多くの経験と知識が必要です。

どのように調律を行っているのかを動画で解説しましたので、ぜひご参考ください。

修理のお話で一番関心のあるのは「音、音質、ピッチ、ノイズのない音」など、音に関することです。

お客様から「調律してほしい、いくらかかりますか?」という質問がよく出ます。じつは調律というのは、修理という仕事の最後に出てくる「仕上げ」の部分のことなのです。

調律の前にしなくてはならないことがたくさんあって、いきなり調律をどうこうする、どのくらい時間が、お金がかかる?というご質問にはこたえられない、というのが正直な話です。

音が安定して出るためには以下のようなこと、チェックが必要です。

  • 鍵盤はスムースに動いているか(鍵盤に動きのムラや作動ノイズが大きいと調律しても問題を残したままになります。右だけではなく 左のベースもチェックしないといけません。ベースボタンの動きや、音色スイッチ、左手を通してみて違和感がないかどうか)
  • 音色スイッチは正確に動いているか (音質をきめるスイッチに操作上の問題がないことが重要です。スイッチの作動が不確かだとリードの鳴り方が不安定になったり、別な音が混在するので違和感が出ます。)
  • エアもれがないか (USED楽器に限らず アコーディオンは蛇腹を押さないでもわずかに開く、ということはあります。程度によりますが、そのこと自体は大きな問題ではありません。シューという音がするようなエアもれなどが問題です。)

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 内部をあけてみて(上 画像) リードの表面のうらおもてを見て、状態を確かめます。(さぶた革ー後述ーや笛(リードブロック)の状態をみます。

さぶた革がカールしていたり、不均等に開いていたり、あるいはカビ、変色 などがないかどうかを見ます。

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こういったチェックをして、はじめて調律前にやらないといけない作業が何と何で、期間と手間がどれくらいかかるのかがわかります。

もちろんすべてを思い通り完璧にやる修理などは無いでしょう。気持ちよく弾ければそれで構わない、という希望であれば、その方のご希望に添うような必要な作業のみを行います。 そのあとが、調律なのです。

 

 1 基本音 第二番目のA音を合わせる 

もともと設定されているピッチを基本に調律する場合(たとえばA=442ヘルツだったものをそのまま442で調律するとき)の手順は以下のようなものになります。これはいわゆるTOKYOベイアコ方式で、フランスで一般的な方法であり、ドイツはやや異なります。

まず、基本音第二番目のA音をチューナーで A=442 ヘルツにきっちりあわせます。

このきっちりというのが、意外と難しく、押し引きの差がでたり、強め、弱めで音高が変わるのはよくありません。かつて日本では、押し引きにピッチ差をあえてつけて、押したときと引いたときに音のの高さが変わる調律が多くあったようです。いまでも年配の方にはそれがいいという方がいますが、世界のすう勢は押し引きの差はつくらないのが普通になってきています。

 

 2 5度のインターバルのうなり(ビート) 

3度、4度、5度 -- とある音階間の2音を鳴らした時、耳に濁り感、ざわざわ感が聞こえてきます。調律では一番にごりの少ない5度を多用して調整をしていきます。

 

 3 次の5度、Aの下のEと合わせる 

次の5度、Aの下のEと合わせます。一緒に鳴らしてみると、ざわざわと不快なビートが聞こえてきます。これが毎分91回になるようメータで近づけていき、あとは耳で数えます。

91全部数えるのではなく、10秒分、つまり六分の一の値を数えます。91であれば15回強ということになります。やり方としては、メトロノームを91に合わせ、鳴らすとそのビートがはっきりが出るので、それにあわせるのが作業しやすいでしょう。

以下の数値は5度の各インターバルのうなり(ビート)数。

A91→ E 66→ B50→ F#75→C#56→G#85→ D#62→A#48→F 71→ C 53→ AG 80→ D 59→ A(続く)

同じ5度でも48と91、およそ回数にして倍異なるうなりを出すのが、平均律の調律です。

同業者で5度のうなりはみな同じだと言っている人がいて、グレゴリオ調律のようでしたが、仮にこれで調律すると12音の最後に大幅狂いが出てくるので、恐ろしいことです。

ただ注意が必要なのは、ビートは基本音に対しその対象音はゼロ(協和点)からはなれたピッチであれば、低くても高くてもうなりは同じ回数になる点です。私はストロボをチェッカーとして多用しており、この方法であればマイナスとプラスを取り違える危険はありません。

世間には、「調律は耳であわせる」ともっともらしく言われます。確かに合わせたあとに質感をチェックする際、その耳が重要であるのはそのとおりですが、平均律はメーターのほうが正しく合わせらます。

私は自分のことを調律師とは言いません。自分はアコーディオンの修理屋です。調律もいたしますよ、としか言わないことにしています。それほど、世間では「調律師なるものは天才的な聴覚をもって音を聞き分ける」というイメージがあって、私はそんなすごいことはできないので、修理屋でいいと思っています。

 

 4 メーターの有効性 

ともかく、上記のビート数はそれぞれマイナス、プラスがあり、それを間違えないようにするには、メーターが有効です。

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とくに上の画像中央にある 緑の窓が12個並んでいるストロボは大変有効につかえます。12音が一斉にわかるのですが、3倍音や5倍音が 反応するので調整しやすいのです。(倍音:音作りにかかせない要素のひとつ。別項で解説します)

Eの次はB,さらにF#と進んで、最後にDの音をとって、それがAとの間で、59回つまり1秒に1回のうなりになっていれば「成功」といえます。

 

 5 完全なオクターブをつくり、下方上方へ広げる 

この方法で完全な1オクターブをつくって、それを、下方、上方へ広げて41なり、なりの音域を決めていきます。

ここでもやっかいな伝説(?)があります。下のG、やFは本来の値より低くし、上のF、G、Aあたりは少し高くする、いわゆる「音程カーブ」の考え方である。ほかにも、Bはやや高めがいいとか、Eどうだとかいろいろあります。

しかし、きちんとビート数を合わせてそのオクターブ調律を行っていれば、とても信頼できるバランスのとれた音程になる、というのが私のいまの心境です。

 

 6 M(クラリネット)リードを1本完成させLとのインターバルをとる 

調律はまず、M(クラリネット)リードを1本完成させ、それから、Lとのインターバルを音でとっていきます。これが、また大変たのしくもあり、厄介な調律作業です。あのバンドネオンと称されるMLの組み合わせです。

ワレすぎてもよくない、うなりが耳につくのもよくない。押し引きで違うのもよくない…

正直、これは永遠のなぞ、といってもいいかと思います。ぴったり協和させる方法と、ほんのわずかLを上側に、あるいは下側に置くというのもいい音がするので捨てがたいのです。

私は、中央から下にかけてはLを上にとり、中央すぎで逆交差させる方法が好みですが、はたしてこれが大正解かどうかはわかりません。リードの性格、ボディ、キーボードなどで音色は変わるし、ますます複雑怪奇なのです。

 

 7 MM ゆれの設計 

MMのゆれはアコーディオン特有の音質であり、弾く人には大きな関心事となります。それだけに注意深く作業を進めていきます。

このMMのゆれは、ほぼ同一の音高の複数のリードを一緒にならすと、その周期のわずかな違いでいわゆる不協音となってうなりが生じることを逆手に応用したものです。

2つの音のずれ幅でうなりの早さ(回数)が変わってきます。当店の標準は中央のCのお隣のAで各MMを108回を基本にしています。オクターブ下が62回、上が180回。これはフレンチ式で、日本の伝統うなり回数よりやや少ない(うすい波)となるため、オーダーによっては各種の方法をとることもあります。

 

 8 ミュゼット 

Mが3セットある楽器をミュゼットといい、M1,M2,M3を一緒にならした時の音をミュゼット音といいます。フレンチワルツにしろ、アイリッシュにしろはたまた抒情歌、演歌にもこのMMMは好まれます。

組み合わせ上、MMに比べ複雑になりますが、高いMと低いMを対称的に配置するのが一般的です。これも好みによって無数の調整があり、実際各種のミュゼットを実測してみると、それぞれ異なっていることが分かります。

 

 9 左 バスの調整 

このバスの調整は原則はあるが、かなり恣意性が高いもので、L1.L2を比較的厳密に合わせたのちは、M1.M2と5列の場合H1はどちらかといえば「好み」で調整されている。うなりの少ないというかゼロ、ユニゾンが5つ一緒に鳴る、というスーパードライの調整から、5列にそれぞれ個性を持たせ、独特なうなり、ざわめき感を出すスーパーウェット まで多様にあります。

 

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アコーディオンの仕組み

アコーディオンはリード(振動する小さな細いハガネの板)を、ジャバラでおこした風の力で鳴らす楽器です。

41鍵盤だと41音(つまり41セットのリード)がありますが、押し引きで同じ音を出すため、「押し用」と「引き用」の1対で1音をつくります。そのため、41音の場合、41×2=82個のリードで構成されているということになります。

さらにMMLとかHMMLと呼ぶように、オクターブ(12音)違いのリード列や中音域(M, つまりミディアムMedium の M)は少し音高を上げ、あるいは下げた同じような Mのリードを別に1セット、もしくは2セット組みこんで 多彩で深い、奥行感のある音色を出すように作られています。

このいくつかのリードセットを、鍵盤にとなりあわせの音色スイッチを押すことで、その組み合わせを変える(つまり、音の性格をかえて演奏する)ことができるという特徴があります。これは、パイプオルガンの仕組みを応用したものだと思われます。

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リードに風をおくるジャバラがあるのも特徴の1つです。こいだとき強い風が楽器の中で動き、それがリードにあたって音がでます。

風はジャバラを引く時と押し戻す時では、流れが逆になります。その風をうまくリードにつたえる工夫が、リードに貼った革(さぶた革)によって可能になります。

またピアノやギターは音の「減衰」といって、叩いた音は数秒以内に消えていきます。アコーディオンはジャバラが動いている間は、音が鳴りつづけます。なめらかな管楽器に近い音で演奏ができるという特徴があります。

左にはベースユニットという仕掛けがついています。1台のアコーディオンで右でメロディを弾いて、左でたとえばリズムを刻むなど、1台でちょっとした楽団のような効果の演奏ができます。ベースには同じようにリードがあり、12音(オクターブ)が4セットあるいは5セット組みこまれています。そのため、ドの音を弾くと 4セットリードだと引きで4つのドが、押しで別なドの4つが鳴るという構造になっています。

Cメジャーだと「ドミソ」ですから、引きで3×4セット=12個のリードが一斉に鳴るわけですね。小さくとも迫力のある左の音はこの重ね合わせたリードから生まれる音なのです。

修理の事例や専門的な調律のお話は FACEBOOKで「アコーディオン修理塾」という 自由閲覧のグループをやっています。8年目で、数え切れない事例を画像、動画で掲載しています。調律を理解し、ご自分でもやってみたいという場合、またどこか調律を依頼するという場合にも、アコーディオンの構造、部品の概要を知っていると、より手短かに課題が解けるかもしれません。

 

 

アコーディオンのDNA

アコーディオンの歴史や注目される背景について、解説いたします。

 アコーディオンの歴史 

アコーディオンはいつ、誰が発明したのでしょうか。

アコーディオンは太古の時代から、私たちの祖先が知恵を出して作ってきた楽器の集大成ともいえます。

直接的には1822年ドイツの技術者F.ブッシュマンが楽器の調律用に作った道具である金属リードで鳴るハンドエリオーネだろう、といわれています。

※リード:河川に生えるアシの茎のこと。茎をけずって笛~オーボエなど~の音源にしています。そこから振動の簧(した)のことをいうようになりました。

アコーディオンは複数のアイディアを集大成した楽器です。F.ブッシュマン以降、C.デミアンはじめ、P.ソプラーニ、ダラッペ、M.ホーナーなどそれぞれアイディアを競い、加味して楽器としての内容をいっそう豊かにしてきました。

アコーディオンの音源であるリード自体の歴史は古くBC2500年ごろから、中国で使われ始めた笙(チェン、日本の雅楽に使われるものと同じ)に由来します。それをジャバラの風力で鳴らすという発想は、パイプオルガンやポルタティフ(小型パイプオルガン)から、リード自体は手回しオルガン、オルゴールなどから、あるいはオーボエのようなシングルリード楽器から、スイッチはやはりパイプオルガンからのアイディアにも由来すると思われます。

同じ金属リードで鳴るコンサルティナもほぼ同じ時代1829年に、C.Wheatstoneが発明しています。この1800年前半,産業革命によってあらゆる分野で欧州一帯が「新製品」、「新技術」に沸いていたのだろうと推測できます。科学、技術が花開きはじめたのです。

ブッシュマンから数年のち、1829年ウィーンでC.デミアンが現状のダイアトニックボタン式アコーディオンに近いものを作りました。ウィーンはアコーディオンの最初のメッカでまもなくフランス、ドイツ、イタリア、ロシアなどに伝播していきます。ウィーンで有名なものが3列式ボタンでバスも12音あるシュランメルモデルで、これは150年たった今も製造されているようです。

ピアノ鍵盤型のアコーディオンは1854年には出来たそうですが、普及しはじめたのは1920年前後、世界的な「タンゴブーム」がおこったことがきっかけだそうです。ブームでタンゴに不可欠なバンドネオン弾きが足りないなかで、ピアノ奏者を狩り出すため彼らが弾き易いピアノ鍵盤が大いに重宝されたということです。

ところで、アコーディオンを世界に広めた最大の功労者は「船のり」だったそうで、長い航海の友に携帯されました。アルゼンチンではバンドネオンが定着したほか世界中で、その土地、文化にあったリード楽器として愛用されていきます。

2つの世界大戦でも従軍する兵士がアコーディオンを携帯しました。どの塹壕にもアコーディオンがあったということです。イギリスのコンサルティナも数多く使用され、終戦後それが払い下げられて、その中にいくつかの名器が出てきたという小説にもなりそうなエピソードがいくつもあります。

1950年から1970年にかけての時代を「Golden Age of  Accordion」といいます。この時代極めて数多くのメーカーがアコーディオンを作り世に送り出しました。デザイン、部品も多様で、木材、金属など現代でも入手しにくいものがふんだんに使われ、作られた時代でもあります。この時代の楽器でよく調整されたものは「音質がよい」ことで有名です。

貴重なショット。 右から Gola, Morino。 1960年代後半の写真。←写真が記事上に残っていません(井形)

HOHNER工場で不世出の二人の楽器マエストロが最高峰の楽器を目指していました。同じ頃、故郷のItalyでは、毎月貨物船に満載してアコーディオンが輸出されていた。2人のマエストロはそのバブルをよそ目に、トロッシンゲンで理想とする楽器づくりにまい進していた。 Morinoは当地で没し、Golaは故郷のItaly Stradellaに 帰郷し、まもなく没した。

Gola ツーショット。 時代をへたGola と 弟分 Golina.←写真が記事上に残っていません(井形)

 

 

 アコーディオンって、なぜ心地いいのですか? 

アコーディオンの修理と調律について、実際に行っている概要、スムースに行う工夫、関連する情報、考え方をご案内します。

楽器のなりたちや機能、調整、不具合の原因などを理解していただくことで、より豊かなアコーディオン・ライフが実現できると信じています。

このスペースでは字数、画像に制限があります。また当方の表現力の不足や資料が足りない部分もあると思いますが、不明な点は「右うえ ご相談問合せ」よりお問合せください。

 

 アコーディオンが注目される背景について 

アコーディオンがなぜ注目されるか、について、解説いたします。

アコーディオンは第二次ブームの予兆があります。第一次が1950年すぎでしたからちょうど半世紀たっていますが、そのアコーディオンの楽器としての特長は何でしょうか。

  1. メロディ部(右)と伴奏部(左)が一体になった楽器だということ。つまり1人でメロディも伴奏も一緒に、あるいは独立して行うことができる。
  2. 65音域(41鍵盤ピアノ式のHML仕様)あります。ピアノの88鍵盤に迫る広い音域で、クロマチックボタン式では79音域もある楽器があります
  3. 左のボタン1つでコード(和音)がかんたんに弾ける。本来コードは重音で1つのボタンでは弾けないものが、アコーディオンでは可能です。
  4. ミュゼットトーン(中音域の2重リードセットによる揺れる音)やオクターブ違いのユニゾン(同名音)の和音が弾ける他の楽器に無い、まれな機能を持っている。
  5. ピアニッシモからフォルテまで、電気の仕掛けなしに音量の拡大、減少が可能(ピアノやギターではできない機能)
  6. 広い音域の中で、ある音域をスイッチで取り出せる。
  7. 単一で鳴らしたり、複合で鳴らしたり音質を変えることができる。アコーディオンの豊かな音色、情感はこの変幻自在な音の取り出しにもあります。

2010.1.28 NHK総合「生活ほっと」でM.ジャクソンの人気の秘密の報道のなかで、M.ジャクソンが2つの際立った特長を持った声の持主だと、分析報道されました。

その1つは、7つの異なる声の持ち主だということ、2つ目は高音域でビブラートがかかる、というものです。実は、アコーディオンも全く同じ特長を持っています。

スイッチで変えられる音質(3セットリードで7種、4セットリードでは11種)、ビブラートはミュゼットトーンに代表されるように、アコーディオンの特長そのものです。M.ジャクソンの歌う「ヒール・ザ・アース」もそうですが、安らぎのある音楽に共通する特長だと思われます。

 

  1. 何といっても「持ち運べる」、聴き手の目の前まで近づいて演奏できる。携帯性は何よりの強みです。
  2. 音量が大きい。
  3. 質感のある音色(振動源のスチールリード)の倍音特性と、本体で共鳴するふくらみのある音色、低音から高音まで豊かな音域などで、情感を細やかに表現できます。
  4. 環境にやさしい楽器だということ。

手入れのよいアコーディオンは40年、50年立派に活躍します。時間がたつにつれてリードの振動が滑らかに作動し、楽器本体も共鳴しやすくなります。この長期に使用できる点が大きいのです。使われる材料も大半が木材で再生可能な資源。若干のアルミニウムと鉄、セルロイドを使用します。重要なことは電源不要であらたにエネルギーを消費しません。

  1. いやし、いやされる音色。ストレスの多い現代でアコースティックな音色は電子系音楽に比べこころを癒すという方が多いです。

実際、アコーディオンのMリード(クラリネット:中音域)は女性の声と類似 ~ 母親の子守唄に似ている~ といわれています。また、精神的に疲れのある状態においては「同質の原理」に基づく音楽療法が有効であるといわれます。

つまりストレスでいっぱいになったときは、自分の感情を溜め込みすぎないで、ある程度吐き出す(カタルシス)ことで、荒らぶるこころが少しずつ平穏に戻っていくものです。

そのとき音楽が有効に働くことはご存知のとおりです。

その音楽は、その方の気分と「同質である」こと。アコーディオンは情感豊かな音色で、硬軟さまざまな音色が出せるため、弾き手のこころをそのまま移すことのできる楽器めずらしい楽器です。

 

アコーディオン修理塾のご案内

アコーディオンに興味のある方におすすめしたい、Facebook「アコーディオン修理塾」についてご紹介です。

毎週のように日々の工房での修理事例やアコーディオンの構造の説明、海外の修理人の仕事ぶりやらイタリアのメーカーの工場風景など、珍しい情報を満載しています。

ここの文字 ↓ をクリックするとFacebookにリンクします。見学無料。

 Facebook アコーディオン修理塾

 

アコーディオン修理塾では、およそ以下の順番で記事をアップしますが、脱線したり割愛したりしますので、必ずしも目次のとおりにはなっていません。その点はご理解ください。

  1. 楽器の構造、しくみ
  2. 音、調律
  3. リード、さぶた革、リードブロック
  4. キーボード
  5. 音色スイッチ
  6. ジャバラ
  7. ベースボタン スタンダード
  8. ベースボタン 3+3
  9. 肩ベルト
  10. ジャバラバンド
  11. ベース リストバンド
  12. ケース
  13. オーバーホール
  14. 部分修理
  15. 修理期間
  16. 修理料金

なお、修理ご依頼いただく場合、現状の楽器の状態の診断、修理の見通しを立てるまでの費用として5500円申し受けております。事情により中止される場合もこの費用は発生いたします。

 

オークションでアコーディオンを購入する際の注意点

オークションにてアコーディオンを購入される方もいらっしゃるかと思います。

しかし、オークションでの購入には注意が必要です。

オークションの問題点は以下のとおり多岐に亘ります。

  1. 専門のスタッフがおらず、楽器の状態もよくわからないまま販売されていることがあります。扱い方や梱包に至っては上下さかさまに梱包され、故障したり、キズついたりも珍しくありません。
  2. 名称も「〇〇マイスタ」とか、勝手に作った「△△最優秀」など一見それらしい名称で氾濫しています。
  3. 「ノークレーム」「ノーリターン」が法的効果があるかごとき対応で不親切と言わざるをえません。
  4. 仲間と結託して値段をつりあげることがあります。これはヤフオクなど主催会社の倫理観、商業主義が背景にあります。海外のオークションでは終了時間ですべて終了というのが通例で、日本だけが無法な状態にあります。

楽器は気持ちよく購入したい、使いたいものです。ご心配な方は、当方へご一報いただければその楽器の質問方法などご指導いたします。

 

 

ITALYをはじめとする世界各地から実績のある楽器だけをセレクトしました。
さらにTOKYOベイアコで調整、調律を行っています。
ご希望によって肩ベルト、胸パッド、ソフトケースなど備品の新品お取替えも致します(有償)。
楽器の詳細や試奏希望はご質問・ご相談からお願いします。


修理工房・商品試奏
下記の所在地にて原則 年中無休でご確認いただけます。
(予約制です。事前にご確認ください)
電話にてもお受けいたします。

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